研究計画書(プロポーザル)の書き方

研究で生きる

研究計画書(リサーチプロポーザル)とは

最近は多くの国で、研究計画書(リサーチプロポーザル、略してプロポーザル)を書いて、他の研究者と競争して、研究資金を獲得してくるということが必要になっています。時期によっては、研究そのものよりも、このプロポーザルの準備に、多く研究者が多くの時間と意識を集中させなくてはならないこともあります。

とは言え、スイスの大学では、大学から十分な資金が出て、わざわざ資金獲得に時間を費やさなくてもよいみたいですし、国によっては競争はそれほど激しくなくて、ツメが甘いプロポーザルでも通ってしまったりするので、プロポーザルの準備にかける労力や集中力っていうのは、国によって、分野によってまちまちのようです。

実は、このプロポーザル書きは、大学生くらいから始まっていて、奨学金申請とか、旅費グラント申請とか、交換留学グラント申請とかで、自分についてとか、これからやりたいことについて書く機会は結構あるものです。

小さいグラントでも奨学金でもCVに書けるものをもらっておくと、それが次の申請のときに有利に働くので、コツコツといろいろなグラント、奨学金、賞に応募することを若い人には強くお勧めしたいです。特に、小さい賞とかグラントは結構簡単にもらえるので、申請は面倒でも、費用対効果は抜群です。そして、過去の栄光が次(ポスドクフェローシップ、PIポジション、研究資金獲得)に、雪だるま式につながっていくわけです。

結局、研究者のCVって積み重ねが部分が大きいのです。どれだけたくさん賞やグラントを獲得し、どれだけたくさんの価値ある論文を出して、どれだけたくさんの若い研究者を輩出したか、ということで研究者の価値を評価されてしまうことが多いです。

だから、コツコツやっていくことはかなり重要です。

もちろん、一発研究が当たればいいですが、その一発当てるための資金はどこかで稼いで来ないといけないわけですし。

で、コツコツ稼ぐために必要になるのが、やっぱりプロポーザル書きです。

国によって書き方(どこまで研究計画を細かく書くか、等)には相違があるようですが、意識しなければいけない部分は共通だと思われます。私の経験のほとんどはヨーロッパで得たものですが、良いプロポーザルの共通点を考えてみました。

まずは一直線を意識する

過去から今現在まで、社会問題から研究テーマに至るまで、過去の研究から今回提案する研究に至るまで、一直線でつなげてみましょう。

一見、一直線につながらないことは、特に気を付けて、論理的につなげましょう。これが、プロポーザルの強さになります。

例えば、フェローシップに応募するときに自分(応募者)について書くとき。

数々ある分野の中からなぜこの分野の研究を選び、なぜ研究者をめざし、なぜ今このフェローシップでこの研究がしたいのか、ということを、まっすぐつなぎ、選択の理由をはっきり記述しましょう。実際自分が選択したことでなくても、ポジティブに。

やりたいことを、自分で選択して突き進んでいる印象を与えた方が絶対お得です。

自分で選択しなかったこと(例えば、長期間の病気や、家族の看病など)は、そのように書けば考慮してもらえることがありますので、Instructionをチェックすることをお勧めします。

実験計画の部分では、大抵State of artという導入のようなセクションが最初にあって、ここで提案する研究計画に至るまでの、その分野の最先端で分かっていることを書きます。ここをビューンと、一つの矢印を書くごとく、自分の研究計画につなげていく必要があります。

構造としては、

1.可能であれば社会的な問題から始めてその分野の研究の重要性を説き、

2.最近の研究で明らかになっていることを説明し、

3.それでもまだわかっていないこと、問題をはっきりさせて、

4.だから、私はこの研究を提案するのだ!、と言う感じで本編につなげます。

で、この部分で、研究計画部分に出てくる全てのキーワードを説明しておく必要があります。ここがちょっと難しいところですが、審査する人がその分野の専門家でないこともありえるので、専門家以外でも、自分の研究の重要性と計画の合理性を理解できるように書く必要があります。

研究分野の問題(不明な部分)から研究計画につなげるときも、一本の矢印を意識しましょう。

1.ここはわかっていない(問題

2.でも、私はこうだと思う(仮説

3.だから、こういう目的をもって、以下のことを試すことを提案する。

っていう感じです。自分の仮説以外にも強力な仮説があるときは、なぜ自分がその仮説を支持するのか、はっきり理由を書きます。また、仮説を試すのに、他のやり方も可能である場合は、なぜ自分のやり方(研究計画)を選ぶのか、はっきりさせましょう。

研究方法の選択の理由は、お金であったり、時間であったり、難易度であったり、なんでもいいのです。でも、その選択の根拠を説明する必要があります。

いろいろな選択肢がある中、なぜ自分がこのような研究計画に至ったか、と言う部分をはっきりと一本の線でつなげて明らかにするのです。

研究計画書のページリミットが短い場合は、「なぜ」部分は省略されていきますが、一本の線は常に意識するとよいと思います。この線が見えない計画書には、説得力を感じないものです。

最近のヨーロッパでは、研究のrupture (断絶)を重視して、プロポーザルの評価をすることもあります。要するに、この矢印をどこかで断絶させるような、全く新しいアイデアを評価するということのようです。また、研究者が、これまでと全く違った分野の研究にチャレンジすることを評価したりします。

とは言え、そんな研究資金を獲得してきた人の計画なんかを見せてもらうと、完全なruptureではなくて、これまで積み上げてきたことを元に新しいテーマに挑戦したり、これまで築いてきた論理をほかの分野に試したり、と言う感じです。過去から今に至る矢印をはっきり表明して、形や方向を変えた矢印を新たに提案する、と言う印象を受けました。

だから、矢印は大切です。

総崩れを避け、現実的に。平行な矢印を意識する

研究計画を書く場合、一番大切なのはその構造です。

よくある構造は、目的ごとにワークパッケージ(またはタスク…要するに「やること」)を設定して、研究内容を詳しく書いていきます。

このときに、ワークパッケージ1をやってそれをもとにワークパッケージ2をやって、それからワークパッケージ3をやる、なんて構造にしてしまうと、ワークパッケージ1がうまくいかなかった場合に総崩れになってしまうので、この構造は絶対に避けるべきです。

複数のワークパッケージが、大きな目的に向かって平行に走っていくというのが、安心の構造と言えるでしょう。

あれもこれも、とやりたいことはいろいろあるかもしれませんが、現実的な研究計画を立てることは大切です。かなり盛沢山な場合は、なぜそれが可能であるか、しっかり説明しましょう。

研究のインパクトは放射状に延びる矢印を意識して、華やかに

フェローシップ申請でも、グラント申請でも、提案する研究がどのようなことに役に立つか、と言うことを書く部分があります。

この部分は、放射状に延びる矢印をイメージして、多くの分野に影響があることを、自信過多くらいな感じで書いてみましょう。

フェローシップの場合だと、自分がホスト研究室に何をもって行き(新しいテクニックとか、その研究室にはあまりない経験とか)、自分が何を得られるか(新しい実験方法とか、他の研究者との交流とか、異分野との交流とか)を具体的に書きます。自分が将来何をしたくて、そのためにこの研究がどのように役に立つか、みたいなことを書くと、覚えめでたき、と言う感じです。

グラントプロポーザルだと、研究結果がどんな知識を作り出し、どんな応用分野に貢献する可能性があるかということを(まことしやかに…いや、自信をもって)書いたり、その研究で何人の学生を教育するか、とか、新しいコラボレーションができるとか、どんな特許を取る可能性があるとか、多岐にわたって、具体的に書く必要があります。

とにかく多岐にわたって色々書けるといいので、この部分は花が開くイメージで、いろいろ詳しく書いてみるといいでしょう。

最後に

グラントプロポーザルとかフェローシップとか、成功率が20パーセントくらいのものが結構あります。みんなが一生懸命いいプロポーザルを書いてくるとすると、運に左右されるところも大きいわけです。で、なるべく運が良くなるために、何ができるでしょうか?

私は運の良し悪しって、結局、どんな審査員が自分のプロポーザルを評価するかっていうところに帰着すると思っています。

審査員が、ちょっと専門分野の違う人で、プロポーザルを完全に理解してくれなかったり、最近老眼で苦労していたり、審査のレポートの締め切りが迫っていて急いで読んでいたり。。。色々と悪い状況が考えられます。

自分が審査員だったら、と考えるとわかりやすいと思うのですが、とにかく、きれいで、読みやすくて、わかりやすいプロポーザルを作成するのが一番ではないかと思います。

それでだめだったら、あまりがっかりしないで、また次回、改良して再チャレンジするしかないです。

粘り強くがんばりましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました